筋力トレーニング、引用

第1章 序論

1. はじめに これまでの国内外の研究成果から、健康づくりにおける、筋力を鍛えることを目

的とした運動(以下、本稿では「筋力トレーニング」として扱う)の効果が繰り返 し示されている。このような知見から、Healthy People 2010 では、定期的な筋力 トレーニング実施者の割合を、2010 年までに全米国民の 30%に引き上げることを目 標の 1 つに掲げている(US Department of Health and Human Services, 2000)。 また、2007 年に発表されたアメリカスポーツ医学会/アメリカ心臓学会による身体 活動推奨基準(Haskell et al., 2007)においても、推奨身体活動の 1 つとして、 筋力トレーニングが推奨されている。

我が国においても、2006 年に厚生労働省が策定した「健康づくりのための運動指 針 2006-生活習慣病予防のために-」(厚生労働省,2006)では、健康の維持・増 進に必要な体力として持久力と筋力の 2 つを取り上げている。これら 2 つの体力向 上のための運動として、持久力に関しては速歩やジョギング等を、筋力に関しては 筋力トレーニングを推奨している。このように、速歩やジョギング等の有酸素運動 とともに、筋力向上のための筋力トレーニングの実施が、我が国における健康づく りを目的とした運動の種類として注目されている。

以上のような国内外の健康づくりに関する施策が示すように、健康づくりにおけ る筋力トレーニングの有効性が確認され、その成果として、筋力トレーニングの実 施が推奨されている。しかし、国の施策として筋力トレーニングの推奨が行われて も、実際に我が国において筋力トレーニングの普及が進むとは限らない。筋力トレ ーニングの実施を促す取り組みやその環境整備を戦略的に進めていくためには、筋 力トレーニングを「行動」として捉え、その「普及」を意図した研究を実施してい くことが必要である。

一方、これまでの健康づくりにおける筋力トレーニングに関する研究は、その「効 果」を検討したものが大半である。筋力トレーニングがもたらす恩恵を明らかにし、 効果的な筋力トレーニング手法について検討していくことは不可欠である。しかし、

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第 1 章 序論

筋力トレーニングを通じた健康づくりを目的とするのならば、「効果」検証研究と 平行して、「効果」検証研究により得られた知見を社会に向けて発信し、国民が筋 力トレーニングという「行動」に従事するようになり、筋力トレーニングが「普及」 していくための方策について考えていかなければならない。

そこで序論では、健康づくりにおける筋力トレーニングの効果について概説した 上で、筋力トレーニングという「行動」の「普及」に向けた1つアプローチとして、 行動疫学の枠組み(Sallis & Owen, 1999)について言及する。

2. 先行研究
2-1. 健康づくりにおける筋力トレーニングの効果

糖尿病患者における血糖コントロールへの効果については、Randomized Control Trial(RCT)による研究で、性別・年齢を問わず、その効果が繰り返し確認されて いる(Castaneda et al., 2002;Dunstan et al., 2002; Dunstan et al., 2006)。 一般成人においても、Miller et al.(1994)は、16 週間の筋力トレーニング実施に よってインスリン反応性が改善することを示している。

血圧に対しても、筋力トレーニングの効果は明らかとなっている。一般成人にお ける筋力トレーニングと血圧の関係に関して、RCT 研究のメタ分析を行った複数の 論文で、その効果が確認されている(Cornelissen & Fagard, 2005; Kelley & Kelley, 2000)。また、高血圧症患者に対する血圧低減効果を示す研究は、有酸素運動との 併用によって検証した研究が多いが、その効果は報告されている(Kelemen et al., 1990;Stewart et al., 2005)。

筋力トレーニングと身体組成との関係についても、RCT 研究で確認されている。 Treuth et al.(1994)および Treuth et al.(1995)では、男性および女性におい て、16 週間の筋力トレーニングによる内臓脂肪の減少が報告されている。また、 Nelson et al.(1994)は、1 年におよぶ筋力トレーニングの実施が、閉経女性の骨密 度や筋力などの骨粗しょう症のリスク因子の軽減に対して有効であることを示して いる。

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第 1 章 序論

身体的健康だけではなく、精神的健康についても、筋力トレーニングの効果が報 告され始めている。これまでの研究で、高齢者において、筋力トレーニングの実施 が、気分状態(Tsutsumi et al., 1998)や、抑うつ(Sigh et al., 1997)などに 対してポジティブな影響を与えることが、RCT 研究で示されている。

加えて、観察研究では、筋力と死亡率との関連性について検討した研究も報告さ れている。Katzmarzyk & Craig(2002)は、カナダ国民を対象に 13 年に及ぶ前向き 調査を行った結果、腹筋力(両性)および握力(女性)と、その後の死亡率のとの 関連性を報告している。

2-2. 行動疫学的アプローチ 以上に挙げたような研究は、筋力トレーニングの「効果」に注目した研究である。

一方、筋力トレーニングという「行動」を促し、その「普及」を目的とする研究手 法を構築するにあたり、行動疫学の枠組み(Sallis & Owen, 1999)に基づくアプロ ーチが有効であると考えられる。

行動疫学では、健康づくりに関する研究を 5 つの局面に分類している(図 1-1)。

局面1:行動と健康アウトカムとの関連性の確立 局面2:行動の測定法の開発と、行動の実施傾向の把握 局面3:行動に影響を及ぼす修正可能な要因の検討 局面4:行動を促す効果的な介入手法の開発 局面5:研究成果の実際面への適用

図 1-1 行動疫学の枠組み(Sallis & Owen, 1999)

行動疫学の枠組みを筋力トレーニング行動に当てはめれば、前項で述べたような 3

第 1 章 序論

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筋力トレーニングの効果検証研究は、局面 1 に該当し、その研究成果の蓄積は進ん でいる。また、諸外国では、不十分ではあるものの、局面 2 以降の研究も行われ始 めている。例えば、局面 2 の研究として、米国における週 2 日以上の筋力トレーニ ングの実施状況は 19.6%であること(Kruger et al., 2006)が報告されている。 また、局面 3 の研究として、筋力トレーニング行動に対する恩恵と負担の認知や周 囲からの支援状況が、高齢者の筋力トレーニング実施に影響を与えること(Bopp et al., 2004)や、周囲の期待に対する主観的規範と行動統制感が筋力トレーニング実 施と関連要因であること(Dean et al., 2007)などが報告され始めている。

しかし、我が国においては、局面 2 以降の研究がほとんど行われていないのが現 状である。すなわち、我が国における筋力トレーニング行動の実施状況がどの程度 であるか、筋力トレーニング行動の実施率が低い集団の特徴は何か、また、どのよ うな要因が筋力トレーニング行動に影響を与えているのか等についてはほとんど検 討されていない。以上に挙げたような問題を明らかとすることで、特に普及を進め ていく必要性が高い集団や、筋力トレーニングに対する介入を行う際ターゲットと なる媒介変数等、今後、筋力トレーニングの普及に向けた取組みを実施する際の有 益な基礎資料を提示することができると思われる。

3. 本研究の構成と目的 本研究は、筋力トレーニングの普及に向けた手がかりを得るために、我が国の一

般成人における筋力トレーニングの実施状況と、筋力トレーニング行動の関連要因 について検討した。

具体的には、研究Iにおいて、笹川スポーツ財団が 2006 年に実施した、スポー ツライフ・データ 2006(笹川スポーツ財団,2006)の 2 次解析を行い、我が国の一 般成人の定期的(週 2 日以上)な筋力トレーニングの実施状況と、定期的な筋力ト レーニング実施者の特徴について検討した。

次に、研究Iよりもさらに詳細に定期的な筋力トレーニングの実施状況を評価す るために、行動変容ステージモデル(Prochaska & Declimente, 1983)を適用し、

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第 1 章 序論

筋力トレーニング行動の変容ステージの分布、および各変容ステージに属する集団 の人口統計学的特徴について検討した。また、実施場所、用いる負荷、および実施 形態の観点から、我が国において実施される傾向にある筋力トレーニングの具体的 な内容について明らかにした。加えて、行動変容ステージモデルの構成概念の 1 つ であるセルフ・エフィカシー(Bandura, 1997)が変容ステージに及ぼす影響につい て検討した。

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第 1 章 序論

第2章 研究I:筋力トレーニングの実施状況-スポーツライ フ・データ 2006 の解析-

1. 目的 研究Iでは、筋力トレーニングの普及に向けて、スポーツライフ・データ 2006

を使用して、筋力トレーニングの実施傾向と、実施者の特徴について検討を行った。 筋力トレーニングの実施に関する調査は、スポーツライフ・データ2006の報告書(笹 川スポーツ財団,2006)において、すでに行われている。ただし、この調査はスポ ーツ全般を対象として実施されているため、スポーツライフ・データ 2006 の報告書 で示されている結果のうち、筋力トレーニングに関する記述は単純集計とクロス集 計にとどまっており、詳細な情報を得ることができない。

そこで、笹川スポーツ財団から許可を得、スポーツライフ・データ 2006(笹川ス ポーツ財団,2006)の 2 次解析を行い、我が国における筋力トレーニングの実施傾 向、および筋力トレーニングの関連要因について詳細に検討することを研究Iの目 的とした。

2. 方法
2-1. データ収集と対象者

本研究で扱うデータは、笹川スポーツ財団が 2006 年 6 月から 7 月にかけて実施 した調査である、「スポーツライフ・データ 2006」を 2 次分析したものである。当 調査の対象者は、層化2段無作為抽出法により、標本数を3000と設定して抽出され た。層化の手続きに関しては、全国の市町村を都道府県単位で 11 地区に分け、さら に各地区内において都市規模で分類を行い、各地区・都市規模別の 20 歳人口の大き さにより、3000 の標本数を比例配分した。また、対象者の抽出法については、平成 17 年国勢調査での抽出法に従って調査地点(町・丁目・番地・部落等)を決定し、 調査地点の範囲内を、住民基本台帳により等間隔抽出法によって対象者を抽出した。 質問紙の配布と回収は、調査員による訪問留置法で実施された。その結果、1867 名 分の有効回答が得られた。なお、調査の具体的な手続きについては、全て笹川スポ

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第 2 章 研究I

ーツ財団(2006)を参照した。また、データを 2 次分析するに先立ち、笹川スポー ツ財団から集計データの使用について承認を得た。

2-2. 調査内容
2-2-1. 筋力トレーニングの実施

筋力トレーニングの実施については、スポーツライフ・データにおける、問 1 と 問 2 のデータを用いた。問 1 は、60 種に及ぶ運動・スポーツ種目の中から、過去 1 年の間に実施した種目を挙げるものである。なお、これらの種目は 50 音順に一覧と なって提示され、対象者は一覧の中の該当する種目に○印を付ける形式になってお り、種目別に回答の偏りが生じないように構成されている。本研究では、問 1 で、 筋力トレーニングを実施したと回答した者を筋力トレーニングの実施者とした。

また、問 2 では、問 1 で挙げた種目の中から 5 つを選び、各種目を行った頻度の 回答を求めている。なお、回答は、年何回、月何回、週何回という選択肢から 1 つ を自由に選んで回答する形式であるため、年 104 回以上、月 10 回以上、または週 2 回以上の頻度で筋力トレーニングを実施していたと回答されていたものを、「週 2 日以上の実施」とした。

2-2-2. 関連要因

これまでの身体活動・運動の関連要因に関する研究の文献調査(Trost et al., 2002)を参考に、筋力トレーニングの実施に関連すると思われる要因を、スポーツ ライフ・データにおける問 12、およびフェースシートから抽出した。問 12 は、日 常の生活習慣・健康に関する設問である。今回は、健康状態の主観的評価、体力の 主観的評価、および喫煙習慣に注目した。 健康状態は、「あなたは、ご自分でふだん健康だと感じていますか」という教示に 対して、「1:非常に健康だと思う」、「2:健康な方だと思う」、「3:あまり健康 ではない」、「4:健康ではない」の 4 つの選択肢の中から 1 つを選んで回答するも のである。今回の研究では、「1:非常に健康だと思う」または「2:健康な方だと

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第 2 章 研究I

思う」と回答した群と、「3:あまり健康ではない」または「4:健康ではない」と 回答した群の 2 群として取り扱った。 同様に、体力の主観的評価では、「現在、あなたはご自分の体力についてどのよう に感じていますか」という教示から、「1:体力には自信がある」、「2:体力は普 通である」、「3:体力に自信がない」のいずれか 1 つを回答するように求めている。 分析では、「1:体力には自信がある」の群と、「2:体力は普通である」または「3: 体力に自信がない」の 2 群に分割して検討した。 喫煙習慣に関しては、「1:吸う」、「2:以前吸っていたが止めた」、「3:これま で吸ったことがない」の3つの中から1つを回答するものであり、本研究では、「1: 吸う」の回答を「喫煙習慣あり」、「2:以前吸っていたが止めた」または「3:こ れまで吸ったことがない」を「喫煙習慣なし」とした。

フェースシートからは、年代、性別、身長、体重、婚姻に関する設問を抽出した。 また、身長と体重については、BMI に換算した上で(体重(kg)÷身長(m) 2 で算出)、 過体重と痩身の基準値から、18.5 未満、18.5 以上 25 未満、25 以上の 3 群に分割し て検討を行った。

2-3. 解析 まず、一般成人全体における定期的な筋力トレーニングの実施傾向について検討

した。次に、変数間の影響を統計学的に制御した上で、筋力トレーニングの定期的 な実施の関連要因について検討するために、筋力トレーニングの定期的な実施を従 属変数、年代、性別、BMI、婚姻、喫煙習慣、健康状態の主観的評価、および体力の 主観的評価を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。なお、Healthy People 2010 の基準に基づき、週 2 日以上の筋力トレーニングの実施を、定期的な 実施とした。データ解析には、SPSS ver.14.0 for windows (SPSS Japan Inc.)を 使用した。

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第 2 章 研究I

3. 結果
3-1. 対象者の特徴

対象者の特徴は、表 2-1 に示す通りである。およそ 3 割の人に喫煙習慣があり、 7 割が既婚者であり、BMI(kg/m2)が 25 未満の人が 8 割を占めていた。また、全体 の 7 割程度の人が健康状態は良好であると報告しており、1 割弱の人が体力に自信 があると回答していた。

3-2. 筋力トレーニングの実施状況 一般成人全体の筋力トレーニングの実施傾向について検討した結果(図 2-1)、

定期的(週 2 日以上)に筋力トレーニングを実施した人の割合は、20 代で 9.9%、 30 代で 5.0%、40 代で 4.9%、50 代で 2.2%、60 代で 2.5%、70 歳以上で 0.6%で あった(全体:3.9%)。

 

図2-1 各年齢階層における筋力トレーニングの実施傾向

3-3. 定期的な筋力トレーニング実施の関連要因 関連要因について検討するために、筋力トレーニングの定期的な実施(週 2 日以上) を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。その結果、年代、性、配偶者 の有無、喫煙習慣、および体力の主観的評価において有意な関連が認められた(表 2-2)。すなわち、50 歳以上の人、女性、喫煙習慣がある人、または体力に自信が ないと回答した人のほうが、定期的に筋力トレーニングを実施していないことが明 らかとなった。また、他の変数の影響を調整しても、年代が上がるとともに定期的 な筋力トレーニング実施に対するオッズ比が小さくなる傾向が示され、高齢になる ほど筋力トレーニングを実施しないことが明らかとなった。

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表2-2 週2日以上の筋力トレーニング実施を従属変数とした ロジスティック回帰分析

第 2 章 研究I

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調整オッズ比

年齢階層
20歳代 1.00 30歳代 0.60 40歳代 0.53 50歳代 0.23 60歳代 0.24 70歳代 0.06

性別
男性 1.00 女性 0.46

BMI (kg/m2)
< 18.5 1.00 18.5-24.9 1.31 ≥ 25 1.05

配偶者の有無
未婚 1.00 既婚 0.80

喫煙習慣
喫煙習慣なし 1.00 喫煙習慣あり 0.50

健康状態の主観的評価
不良 1.00 良好 1.53

4. 考察 本研究では、我が国における筋力トレーニング実施者の特徴を明らかにするため

に、一般成人における定期的な筋力トレーニングの実施傾向と、定期的な筋力トレ ーニング実施の関連要因について詳細に検討することを目的とした。

解析の結果、筋力トレーニングを定期的(週 2 日以上)に実施している者の割合 は、3.9%であった。Healthy People 2010(US Department of Health and Human Services, 2000)では、30%を目標値として掲げており、米国で 2004 年に実施され た調査では、定期的な実施者の割合は 19.6%と報告されている(Kruger et al., 2006)。米国における研究とは調査項目が異なるため単純には比較できないが、デ ータが示すように、日本の一般成人の多くは、定期的な筋力トレーニングを実施し ていないのが現状である。

次に、変数間の影響を統計学的に調整した上で、定期的な筋力トレーニングと関 連する要因について検討した結果、年代、性、喫煙習慣、および体力の主観的評価 が実施と有意に関連していた。身体活動・運動の関連要因に関する文献調査におい ても、これらの要因が関連要因として確認されている(Trost et al., 2002)。従 って、Trost et al.(2002)の文献調査が我が国の現状にそのまま当てはまらない 可能性は十分にあるものの、本研究で示された筋力トレーニングを実施しない傾向 を持つ集団は、身体活動・運動自体に興味がない傾向にあることが予想される。一 方、配偶者の有無、BMI、健康の主観的評価について本研究では関連要因として抽出 されなかったが、先行研究では、身体活動・運動の関連要因として確認されている (Trost et al., 2002)。配偶者の有無に関してはなぜこのような結果が得られた のかは不明であるが、BMI と健康の主観的評価に関しては、18.5 以上 25 未満の対象 者が 8 割を占め,全体の7割程度の対象者が健康状態は良好であると回答している. そのため、全体的な傾向として、筋力トレーニングを実施していないというよりも, 「する必要がない」と考える人が多かった可能性がある。

また、今回関連が認められた要因のうち、高齢者については、特に注目すべきだ と考えられる。筋力トレーニングは、生活機能の低下が著しい虚弱高齢者において

 

第 2 章 研究I

も、心身機能の向上に対する効果が認められている(Fiatarone et al., 1994;Fujita et al., 2003;Jette et al., 1999;Suzuki et al., 2004)ことから、2005 年に 改正された介護保険制度では、高齢者が要介護状態になることや、軽度の要介護状 態にある高齢者が重度の要介護状態になることの予防を目的として、運動器の機能 向上サービスが創設され、中でも筋力トレーニングの重要性が指摘されている(厚 生労働省,2005)。そのため、本研究の結果は、我が国において高齢者の筋力トレ ーニングの重要性が高まっているにもかかわらず、筋力トレーニングを実施すると いう考え方自体が十分に浸透していないことを示唆している。特に、70 歳以上にお ける調整オッズ比が0.06と非常に値が小さいため、高齢者の中でも、介護予防の必 要性が高いと思われる後期高齢者では実施者が非常に少ないのが現状である。

本研究は、我が国における筋力トレーニングの実施傾向とその関連要因について 詳細に検討した始めての研究である。質問紙への回答が可能な人のみを対象として いるという限界を含むものの、全国を対象とした層化 2 段無作為抽出法による精度 の高いサンプリング法により得られたデータである点も、意義があると思われる。 解析の結果、他の変数の影響を調整しても、年代が上がるに連れて定期的な筋力ト レーニングの実施率が低くなることが示された。また、年代、性、喫煙習慣、およ び体力の主観的評価が関連要因として認められた。先行研究(Trost et al., 2002) の知見を踏まえれば、これらの特徴を持つ集団は、筋力トレーニング以外の種目も 含め、運動そのものを実施していない傾向にあることが予想される。速歩やジョギ ング等の他の種目と平行して、今後は、高齢者や、女性や、喫煙習慣のある人や、 自分の体力に自信がない人でも、筋力トレーニングに興味を持つようになるようた めの、具体的なプロモーション戦略を構築していく必要がある。

本研究の課題として、スポーツライフ・データは我が国の運動全般の動向を主な 調査目的として実施されているため、筋力トレーニングの定義を示しておらず、ト レーニングの具体的な内容について言及できない点が上げられる。マシン、自重負 荷、ダンベルなど、筋力トレーニングの種類は多岐にわたり、その負荷の強度も様々 である。そのため、実施傾向に関する今後の課題として、筋力トレーニングの定義

 

第 2 章 研究I

について明確に示した上で、筋力トレーニングの具体的な内容に関する評価を行い、 どのような種類のトレーニングが実施されているのか明らかにする必要がある。

また、スポーツライフ・データは、非常に高い研究デザインの下、1994 年より 2 年おきに実施されている大規模社会調査であるものの、疾病に有無に関する評価が 行われていない。特に高齢者においては、疾病の有無は筋力トレーニングの実施に 影響を与えることが予想される。従って、今後の展望として、疾病の有無が筋力ト レーニング実施に及ぼす影響について検討していくことで、筋力トレーニングの実 施傾向についてより詳細に評価することができるだろう。

 

第 2 章 研究I

第3章 研究II:筋力トレーニング行動の変容ステージに関連す る要因

1. 目的
研究Iでは、スポーツライフ・データ 2006 を使用して、定期的な筋力トレーニ

ングの実施状況とその関連要因について検討した。ただし、研究Iでは、実施者/ 非実施者という区分で検討を行ったため、不定期的に筋力トレーニングを実施して いる人も、筋力トレーニングに興味自体がない人も、等しく非実施者に含まれる。 また研究Iによれば、定期的な筋力トレーニング実施率が非常に低い。そこで、筋 力トレーニングの普及に向けての手がかりを得るための 1 つのアプローチとして、 非実施者を筋力トレーニングに対する心理的準備性に応じて細分化することのでき る、行動変容ステージモデル(Transtheoreticalmodel:TTM:Prochaska&Declimente, 1983)の適用が有効であると考えられる。

TTM は、「健康づくりのための運動指針 2006」(厚生労働省, 2006)でも取り上 げられているように、健康づくりの研究分野において特に注目が集まっている。TTM の中心概念は、「変容ステージ」であり、現在の行動と、その行動に対する動機づ けの準備性の両方の性質を統合している点が特徴である。変容ステージは、前熟考 期(行動に興味のない段階)、熟考期(行動に興味のある段階)、準備期(行動を 非定期的に行っている段階)、実行期(行動を定期的に始めて 6 ヶ月以内である段 階)、維持期(定期的な行動の実施を 6 ヶ月以上継続している段階)の 5 つの段階 から構成される。TTM は、禁煙や食行動など様々な健康行動に適用されており、我 が国の身体活動・運動行動に関しても、TTM による行動の理解が有効であることが 示されている(井上・下光, 2000; 岡, 2000)。TTM では、変容ステージの移行に 影響を及ぼす要因の 1 つとして、「セルフ・エフィカシー」が想定されている。セ ルフ・エフィカシーは、ある行動に対して、「自分はできる」と感じる主観的見込 み感のことである(Bandura, 1997)。これまでの研究で、運動行動に関する変容ス テージが後期段階にいる人のほうが、セルフ・エフィカシーが高いことが確認され ている(岡, 2003b)。

 

第 3 章 研究II

諸外国では、運動の種類やその活動形態は多岐にわたることから、変容ステージ をより精確に測定するための試みが盛んに行われており、運動強度別の尺度(Leslie et al., 2003)や、運動種目を限定した尺度(Cardinal et al., 2004)等が開発さ れている。しかし、我が国においては、運動全般を評価する尺度(岡, 2003a)が開 発されている段階に留まっており、この種の試みは行われていない。また、大多数 の日本人は定期的な筋力トレーニングを実施していないことから、定期的な筋力ト レーニングの非実施者に注目し、非実施者の動機づけの準備性を評価する必要があ る。我が国においても、筋力トレーニング行動に運動種目を限定したステージ尺度 を開発することで、筋力トレーニング行動の実施状況を詳細に評価し、動機づけの 準備性に応じた集団の特徴がより精確に把握できると考えられる。

セルフ・エフィカシーについても同様に、筋力トレーニング行動に特化した尺度 を用いた検討が有効であると考えられる。一般に、セルフ・エフィカシーは、1 つ の行動に特異的であるため、それぞれの行動に対応したセルフ・エフィカシーに注 目するべきであると言われている(Bandura, 1997)。従って、運動を、筋力トレー ニングやウォーキング等の種々の行動の複合体として捉えれば、運動全般ではなく、 各運動種目に特異的なセルフ・エフィカシーを想定する必要がある。

本研究では、筋力トレーニングを通じた健康づくりを効果的に進めていく上での 手がかりを得るために、我が国の一般成人の筋力トレーニング行動に TTM の概念を 導入し、1)筋力トレーニング行動の各変容ステージに属する集団の特徴を明らかに すること、2)筋力トレーニングに対するセルフ・エフィカシーと変容ステージとの 関係について検討すること、の 2 点を目的とした。

2. 方法
2-1. データ収集と対象者

既存の社会調査会社の登録モニター(2007 年 7 月現在、約 26 万人)を対象とし て,インターネット調査を実施した。本研究では、性別と、年齢階層(20 歳代、30 歳代、40 歳代、50 歳以上)が均等になるように層化した上で対象者を抽出した。そ

 

第 3 章 研究II

のうち、データに欠損が認められたものを除き、5177 名(40.1±12.0 歳)を解析対 象とした(有効率 97.3%)。

なお、本研究は、早稲田大学スポーツ科学学術院内における研究倫理審査委員会 の承認を得て実施された。

2-2. 測定項目
2-2-1. 筋力トレーニング行動の変容ステージ

これまで我が国で開発されてきた、運動行動に関する変容ステージ尺度(岡, 2003a)の項目を基に、新たに尺度を開発した。各項目の内容は、「私は現在、筋力 トレーニングをしていない。また、これから先もするつもりはない(前熟考期)」、 「私は現在、筋力トレーニングをしていない。しかし、近い将来(6 ヶ月以内)に 始めようと思っている(熟考期)」、「私は現在、筋力トレーニングをしている。 しかし、定期的ではない(準備期)」、「私は現在、定期的に筋力トレーニングを している。しかし、始めてから 6 ヶ月以内である(実行期)」、「私は現在、定期 的に筋力トレーニングをしている。また、6 ヶ月以上継続している(維持期)」で あった。また、筋力トレーニングの定義については、「腹筋や腕立て伏せ、スクワ ットのような自分の体重を利用した運動、ダンベルやチューブなどの簡易な器具を 利用した運動、フィットネスクラブなどにあるマシンやバーベルを利用した運動な ど、筋肉を鍛えることを目的としたすべての運動を含みます」という教示を与えた。 また、Healthy People2010(US Department of Health and Human Services, 2000) の基準に基づき、定期的な実施とは、週 2 日以上であることを示した。回答方法は、 上記の 5 つの項目から、現在の自分の考えや行動に最も当てはまるものを 1 つ選択 する方式であった。

2-2-2. 身体活動量

筋力トレーニング行動の変容ステージと、実施している身体活動との関連性を検 討するために、International Physical Activity Questionnaire Short Version

 

第 3 章 研究II

(IPAQ-SV:Craig et al., 2003)の日本語版(村瀬他,2002)を用いて、中等度の 強度以上の身体活動量を測定した。IPAQ-SV は、高強度の身体活動、中等度の強度 の身体活動、および歩行運動の観点から、平均的な 1 週間の身体活動量を測定する ものであり、先行研究で、日本語版の妥当性と信頼性が確認されている(村瀬他, 2002)。筋力トレーニングの強度に関して、軽負荷のトレーニングが 3MET、高負荷 のトレーニングが 6MET に相当することが示されている(Ainsworth et al., 2000)。 そのため、本研究では、平均的な 1 週間における中等度の強度の身体活動量と、高 強度の身体活動量の総和(moderate and vigorous intensity physical activity: MVPA)を算出し、その値を解析に用いた。

2-2-3. 実施しているあるいは興味のある筋力トレーニングの内容

変容ステージが「準備期」、「実行期」、「維持期」と回答した人を対象に、実 施している筋力トレーニングの具体的な内容について質問した。項目内容は、筋力 トレーニングを実施している場所、用いる器具、および実施形態であった。実施場 所については、「自宅」、「公共施設」、「商業施設」、「その他」の 4 つの選択 肢、用いる器具に関しては、「自分自身の体重」、「個人購入が可能な器具」、「施 設に付帯する器具」、「その他」の 4 つの選択肢、また実施形態の評価は、「自己 流で実践(書籍を含む)」、「インストラクターによる指導」、「その他」の 3 つ の選択肢の中から、それぞれ 1 つを選び、回答を求めた。 一方、変容ステージが「熟考期」である人に対して、どのような内容の筋力トレー ニングを始めようと思っているのかについて、自由記述による回答を求めた。

2-2-4. 筋力トレーニング行動に対するセルフ・エフィカシー

我が国で開発された運動行動に関するセルフ・エフィカシー尺度(岡,2003b)や 先行研究の知見(Resnick et al., 2000)を参考に、行動科学の専門家 2 名でブレ インストーミングを行い、筋力トレーニングの継続を妨げる状況として、肉体的疲 労、精神的ストレス、時間のなさ、一人での実施、および退屈さの 5 つを想定した

 

第 3 章 研究II

項目を作成した。回答方法は、「以下の項目に示すような状況でも、あなたは定期 的に筋力トレーニングをする自信がありますか。それぞれ最もあてはまるものをお 選びください。」という教示に対して、「全くそう思わない(1 点)」から「かな りそう思う(5 点)」の 5 件法で評定させた。

5 項目に関して検証的因子分析を行ったところ、「一人でやらなければならない ときでも、筋力トレーニングをする自信がある」と「運動内容を退屈だと感じたと しても、筋力トレーニングをする自信がある」との間に誤差相関を想定したモデル で高い適合度指標(GFI=.99, AGFI=.98, CFI=1.00, RMSEA=.06)が得られたものの、 誤差相関の係数も高い値を示した(γ=.71)。そこで、これら 2 つの項目のうち、 どちらかを外して再度検証的因子分析を行ったところ、「一人でやらなければなら ないときでも、筋力トレーニングをする自信がある」を除外したモデルの方が、高 い適合度指標が得られた(GFI=1.00, AGFI=1.00, CFI=1.00, RMSEA=.03:図 3-1)。 また、尺度の内的整合性を確認するため、Cronbach のα係数を算出したところ、α =.90 となり、良好な値を示した。これらのことから、筋力トレーニング行動に対す るセルフ・エフィカシーの測定には、「少し疲れているときでも、筋力トレーニン グをする自信がある」、「あまり気分がのらないときでも、筋力トレーニングをす る自信がある」、「忙しくて時間がないときでも、筋力トレーニングをする自信が ある」、「運動内容が退屈だと感じたとしても、筋力トレーニングをする自信があ る」の 4 項目からなる尺度を用いた。

 

2-2-5. 人口統計学的変数

本研究では、身体活動・運動の関連要因に関する文献調査(Trost et al., 2002) の結果を基に、筋力トレーニング行動に関連があると思われる項目として、性別、 年齢階層、配偶者の有無、教育歴、職業の有無、世帯収入、TV 視聴時間、およびイ ンターネット利用時間を取り上げた。

2-3. 解析 まず、筋力トレーニング行動の変容ステージに属する集団の人口統計学的特徴を

明らかにするために、選択肢が 3 つ以上あり順序変数として扱うことのできる変数 (年齢階層、教育歴、世帯収入、TV 視聴時間、およびインターネット利用時間)に ついては、変容ステージを独立変数、各変数を従属変数とした Kruskal-Wallis 検定 を行った。順序変数として扱うことの出来ない変数(性別、配偶者の有無、および 職業の有無)については、χ2 検定を行った。

次に、変容ステージと MVPA との関連を検討するために、変容ステージと関連が認め られた変数を共変量、変容ステージを独立変数、MVPA を従属変数として共分散分析 を行った。続いて、実施されているあるいは興味のある筋力トレーニングの種類と、 ステージとの関連性について、χ2 検定を用いて検討した。

また、人口統計学的変数の影響を統計的に調整した上で、筋力トレーニング行動 に対するセルフ・エフィカシーが変容ステージに及ぼす影響について検討するため に、変容ステージを従属変数として、多重ロジスティック回帰分析を行った。

統計ソフトは、SPSS 14.0 と Amos 5.0 を使用した。

3. 結果
3-1. 変容ステージと人口統計学的変数との関係

筋力トレーニングに関する変容ステージの分布は、前熟考期 2043 名(39.5%)、 熟考期 1299 名(25.1%)、準備期 1085 名(21.0%)、実行期 292 名(5.6%)、維 持期 458 名(8.8%)であった。表 3-1 は、筋力トレーニング行動に関する変容ステ ージと、人口統計学的変数との関係を示している。年齢階層(H=85.66, p<.001)、 教育歴(H=25.14, p<.001)、世帯収入(H=19.95, p<.01)、性別(χ2=43.68, p<.001)、 職業の有無(χ2=20.15, p<.001)、および婚姻状況(χ2=56.07, p<.001)におい て有意な関連が認められ、高齢層、低学歴者、低収入者、女性、無職者、または既 婚者のほうが、筋力トレーニング行動の変容ステージが、初期段階(前熟考期、熟 考期)にいる傾向が示された。

 

3-2. 変容ステージと中等度の強度以上の身体活動との関係 変容ステージを独立変数、中等度の強度以上の身体活動量(分/週)を従属変数、

表 1 においてステージ間に有意差の認められた人口統計学的変数を共変量(性別、 年齢階層、職業の有無、婚姻状況、教育歴、世帯収入)として共分散分析を行った ところ、有意なステージの主効果が認められた(F(4, 5166)=25.82, p<.001)。 Bonferroni 法による多重比較によって、ステージが上昇するにつれて、中等度の強 度以上の身体活動量が増加する傾向にあることが示された

 

3-3. 実施している筋力トレーニングの内容 筋力トレーニングの実施場所、用いる器具、および実施形態に関する情報を表 3-2

から表 3-4 にまとめた。自宅(74.3%)において、自重負荷(60.4%)により、自 己流で実践(85.1%)している者が最も多い傾向にあった。「その他」と回答した 者を除き、性別で層化した上で、ステージとトレーニング内容との関連性について

 

χ2 検定を用いて検討したところ、変容ステージが高くなるほど、自宅、自重負荷、 および自己流による実践の割合が低くなり、スポーツ施設、器具の使用、および指 導者による実践の割合が高くなる傾向が明らかとなった。さらに年齢で層化して検 討した結果、50 歳以上の男性を除いて、全ての年代でこの傾向が認められた。

 

自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他 自分自身の体重を利用 個人購入が可能な器具を利用 施設に付帯する器具を利用 その他

 

表3-4 性別・年代・変容ステージ毎にみた筋力トレーニングの指導形態

3-4. 興味のある筋力トレーニングの内容 熟考期に属する人を対象とした、興味のある筋力トレーニングに関する自由記述

について集計した。熟考期 1321 名のうち、1127 名(85.3%)がトレーニング内容 に関して具体的に言及を行っていた。1003名の回答を対象にトレーニング内容を分 類した結果、腹筋・腕立て伏せ等の自重トレーニングについては 651 名(54.3%)、 鉄アレイ・ダンベル等の簡易な器具に関しては 179 名(14.9%)、マシンもしくは 施設でのトレーニングに対しては 248 名(20.7%)、またこれら 3 種以外のトレー ニング内容については 121 名(10.1%)が、興味があると回答していた(複数回答 を含む)。

 

3-5. 変容ステージに及ぼすセルフ・エフィカシーの影響
表 3-5 は、変容ステージを従属変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果を

示している。表 1 において変容ステージと関連の認められた人口統計学的変数の影 響を調整しても、セルフ・エフィカシーが変容ステージに有意に回帰することが明 らかとなった。また、95%信頼区間から、熟考期と準備期の間以外の関係において、 ステージが上昇するほど、セルフ・エフィカシーが強く回帰する傾向が認められた。

表 3-5 変容ステージに及ぼすセルフ・エフィカシーの影響

4. 考察 本研究の目的は、筋力トレーニング行動の各変容ステージに属する集団の特徴を

明らかにすることと、筋力トレーニング行動に対するセルフ・エフィカシーと変容 ステージとの関係について検討することであった。

社会調査会社モニター5177 名を対象に検討した結果、週 2 日以上筋力トレーニン グを実施している者(実行期+維持期)の割合は、14.4%であった。一方、研究I における週 2 日以上の筋力トレーニング実施率は 3.9%であった。本研究では、筋 力トレーニングの用語の定義に関して、Healthy People 2010(US department of Health and Human Services, 2000)と米国における最新の推奨身体活動(Haskell et al., 2007)、および米国の筋力トレーニング実施傾向に関する先行研究(Kruger et al., 2006)の表現に従い、「筋肉を鍛えることを目的としたすべての運動」という 教示を与えて調査を実施した。一方、スポーツライフ・データ 2006(笹川スポーツ 財団, 2006)では、筋力トレーニングの定義はなされておらず、60 種に及ぶ運動・

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スポーツ種目一覧の中から筋力トレーニングを選択する形式になっている。従って、 対象者や調査方法の違いに加え、筋力トレーニングに対する教示の有無が、調査結 果の差違に影響したと考えられる。

筋力トレーニング実施と人口統計学的変数との関連について、高齢層、低学歴者、 低収入者、女性、無職者、または既婚者のほうが、前熟考期または熟考期に属して いた。身体活動・運動全般の関連要因に関する文献調査(Trost et al., 2002)に おいても、これらの要因が関連要因として確認されている。この文献調査(Trost et al., 2002)の知見が我が国の現状にそのまま当てはまらない可能性はあるが、本研 究で示された筋力トレーニングを実施しない傾向を持つ集団は、筋力トレーニング 以外の身体活動・運動の種類に関しても、実施しない傾向にあることが予想される。

中でも、高齢層は、特に注目すべき集団であると考えられる。高齢層の筋力トレ ーニングの実施状況に関して、維持期の割合は他の年齢階層と同等である。けれど も、前熟考期の割合は、より高年齢階層ほど高くなっており、50 歳以上では約半数 (46.6%)がこの集団に属している。このことは、年齢階層が上がるに従い、筋力 トレーニングを習慣的に実施している者と、筋力トレーニングに対する興味自体が ない者との 2 極化が進むことを示唆している。一方、虚弱高齢者においても筋力ト レーニングの効果が認められている(Fiatarone et al., 1994;Fujita et al., 2003; Jette et al., 1999;Suzuki et al., 2004)ことから、2005 年に改正された介護 保険制度では、介護予防事業の 1 つとして運動器の機能向上サービスが創設された。 このように、介護予防の視点からも、筋力トレーニングの重要性が高まっている(厚 生労働省, 2005)。従って、特に高齢層の筋力トレーニングに興味がない者を対象 とした、筋力トレーニングの普及方策の検討が急務であると考えられる。

共分散分析の結果、筋力トレーニング実施者のほうが、中等度以上の強度の身体 活動を実施していると報告していた。方法で指摘したとおり、筋力トレーニングは、 中等度以上の強度の身体活動に含まれる(Ainsworth et al., 2000)。そのため、 本研究で使用した IPAQ-SV では筋力トレーニングのみによる身体活動量を反映して いないものの、変容ステージによる筋力トレーニング行動の評価が妥当である可能

29

第 3 章 研究II

性を示唆していると考えられる。 実施されている筋力トレーニングの内容は、全体的な傾向として、自宅で自分自

身の体重を負荷とした自己流による実践の割合が最も高かった。また、関心期に属 する集団が最も興味のある筋力トレーニングの内容も、この傾向と一致するもので あった。ただし、ステージ毎に実施されているトレーニング内容を検討した結果、 後期ステージになるほど、相対的に自宅等における手軽なトレーニング実施の割合 が低い傾向にあった。横断研究であることから因果関係については言及できないが、 自重等による手軽な筋力トレーニングの開始は容易であるものの、それが習慣とし て定着しにくい可能性がある。

次に、変容ステージとセルフ・エフィカシーの関係について、人口統計学的変数 の影響を調整しても、筋力トレーニング行動に対するセルフ・エフィカシーが、筋 力トレーニング行動に関する変容ステージを予測することが示された。この傾向は、 行動変容ステージモデルの考え方(Prochaska & Declimente, 1983)や、運動行動 全般に関する実証研究(岡,2003b)の結果と一致している。本研究の結果は、筋力 トレーニングに種目を限定した上での行動変容ステージモデルの適用の有効性を裏 付けている。

本研究は、行動変容ステージモデルを用いて、我が国における一般成人の筋力ト レーニングの実施状況とその関連要因について詳細に検討した初めての研究である。 しかしながら、いくつかの限界点を含んでいる。1 点目は、横断的研究である点で ある。筋力トレーニング行動の変容ステージと、実施されている筋力トレーニング の内容、またはセルフ・エフィカシーとの因果関係については言及することができ ない。特に、セルフ・エフィカシーと身体活動・運動の実施との間には相互関係が 認められることが指摘されている(McAuley & Blismmer, 2000)ことからも、今後 は、縦断的調査を実施することで、変数間の相互関係が明確になると思われる。

限界点の 2 点目として、サンプリングバイアスが挙げられる。インターネットを 用いた調査の特徴として、調査者・回答者双方の利便性が高く、データ回収が迅速 かつ正確であるものの、利用者の年齢階層が偏っており、モニター登録という有意

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第 3 章 研究II

抽出法であるため標本誤差が生じ得ることが指摘されている(康永他,2006)。本 研究では、年齢階層を調整した上で対象者の抽出を行っているが、社会調査モニタ ーからの抽出という課題を含んでいる。そのため、本研究で得られた筋力トレーニ ングの実施傾向を一般化する際は、留意が必要である。

筋力トレーニング行動の実施傾向について、変容ステージを用いた検討により、 介護予防が必要になってくると思われる 50 歳以上では、半数近くが前熟考期に属し ていることが明らかとなった。行動変容ステージモデルでは、セルフ・エフィカシ ーに加え、行動に対する恩恵と負担(メリットとデメリット)が、ステージと関連 する要因の 1 つとして想定されている。運動全般に関する先行研究では、変容ステ ージが初期段階の集団に対しては、恩恵と負担のバランスを修正することが重要だ と言われている(Marcus et al., 1998)。今後は、セルフ・エフィカシーとともに、 筋力トレーニングに対する恩恵と負担を評価する尺度を開発し、特に高齢層におけ る変容ステージの移行に影響を与える要因について検討していく必要がある。

また、実施されている筋力トレーニングの内容は、自宅で自重負荷による自己流 での実践割合が最も高かったが、後期ステージになるほどその割合が低くなる傾向 が示された。先行研究では、前向き調査により、セルフ・エフィカシーが高いほど、 身体活動・運動が継続しやすいことが示されている(McAuley et al., 2003)。我 が国の筋力トレーニング行動についても、セルフ・エフィカシーを高める手法(岡, 2002)を含んだ情報の提示により、自宅等における手軽な筋力トレーニングの実施 を継続させるための援助が可能になると予想される。

31

第 3 章 研究II

第4章 総合論議 1. 本研究により得られた知見

1-1. 筋力トレーニングの実施状況について
本研究により得られた知見の 1 点目は、筋力トレーニングの実施状況に関するも

のである。研究Iにおいて、スポーツライフ・データ 2006 の解析の結果(N=1867)、 定期的(週 2 日以上)な筋力トレーニング実施者の割合は、3.9%であった。ただし、 研究Iでは、筋力トレーニングの定義がなされておらず、運動・スポーツ種目一覧 の中から筋力トレーニングを選択する形式になっている。この点を踏まえ、研究II では、Healthy People 2010(US department of Health and Human Services, 2000) と、米国における最新の推奨身体活動(Haskell et al., 2007)、および先行研究 (Kruger et al., 2006)の表現に従い、筋力トレーニングの用語について、「筋肉 を鍛えることを目的としたすべての運動」という教示を与えた上で、社会調査会社 の登録モニターを対象に調査を実施した。その結果(N=5177)、定期的な筋力トレ ーニング実施者(実行期+維持期)の割合は、14.4%であった。

また、研究IIにおいて、筋力トレーニング実施者(準備期+実行期+維持期、 N=1835)を対象に、実施されている筋力トレーニングの内容について検討したとこ ろ、自宅(74.3%)において、自重負荷(60.4%)により、自己流で実践(85.1%) している者が最も多い傾向にあった。ただし、行動変容ステージが後期段階なるほ ど、自宅、自重負荷、および自己流による実践の割合が低くなり、スポーツ施設、 器具の使用、および指導者による実践の割合が高くなる傾向が明らかとなった。

1-2. 筋力トレーニング行動の関連要因について
本研究により得られた知見の 2 点目として、筋力トレーニング行動の関連要因が

挙げられる。研究Iにおいて、定期的な筋力トレーニングの関連要因として検討し た人口統計学的変数は、年代、性別、BMI、婚姻状況、喫煙習慣、健康状態の主観的 評価、および体力の主観的評価であった。解析の結果、関連要因として確認された 人口統計学的変数は、年代、性別、喫煙習慣、および体力の主観的評価であり、50

32

第4章 総合論議

歳以上の人、女性、喫煙習慣がある人、または体力に自信がないと回答した人のほ うが、定期的に筋力トレーニングを実施していないことが明らかとなった(表 4-1)。

また、研究IIでは、人口統計学的変数として、性別、年代、婚姻状況、教育歴、 職業の有無、世帯収入、TV 視聴時間、およびインターネット利用時間が筋力トレー ニング行動に関する変容ステージの関連要因であるか検討した。そして、性別、年 代、職業の有無、婚姻状況、教育歴、および世帯収入に関して、変容ステージとの 関連性が認められ、高齢層、低学歴者、低収入者、女性、無職者、または既婚者の ほうが、変容ステージが、初期段階(前熟考期、熟考期)にいる傾向が示された。 (表 4-1)。加えて、行動科学的変数として、セルフ・エフィカシーに注目し、セ ルフ・エフィカシーが変容ステージに影響を与えることが示された。

表4-1 研究Iおよび研究IIで確認された筋力トレーニング行動の関連要因

週2日以上の実施 行動変容ステージ

 

2. 展望
2-1. 筋力トレーニングの実施状況について

本研究では、筋力トレーニングの実施状況について、横断的な検討に留まってい る。今後の展望として、実施状況の縦断的検討が望まれる。例えば、海外では、ウ ォーキングの実施状況について、10 年以上に及ぶ経時変化が検討されており、デー タの蓄積が進んでいる(Simpson et al., 2003)。筋力トレーニングに関しても、 実施状況の経時変化について検討することで、我が国における施策や自治体による 普及活動等のプロモーションが、国民の筋力トレーニング実施に与える影響につい て明らかにすることができると予想される。

また、米国における研究では、65 歳以上の高齢者に対象を限定した上での検討も 行われている(Kruger et al., 2004)。我が国においても、介護予防が大きな社会 問題となっており、2006 年度から、筋力トレーニングを含む介護予防事業が実施さ れるようになった点を考慮すれば、特に高齢者に注目した、筋力トレーニングの実 施傾向の追跡調査が必要であると考えられる。高齢者が実施している筋力トレーニ ングの内容についても、一般成人と同等であるとは限らない。今後は、高齢者が、 どこで、どのような筋力トレーニングを行っているのかについて、具体的に言及し ていくことが望まれる。

2-2. 筋力トレーニング行動の関連要因について 本研究では、筋力トレーニングの関連要因として、人口統計学的変数については、

性別、年代、BMI、婚姻状況、喫煙習慣、健康状態の主観的評価、体力の主観的評価、 教育歴、職業、世帯収入、TV 視聴時間、およびインターネット利用時間に注目した。 また、行動科学的変数として、セルフ・エフィカシーを取り上げた。しかし、本研 究で取り上げた変数は、身体活動・運動に関する文献調査(Trost et al., 2002) で報告されている変数の一部に過ぎない。

例えば、筋力トレーニング行動に関連する要因として、家族・友人や医療従事者 からの支援状況、筋力トレーニングに関する情報へのアクセスのしやすさ、筋力ト

 

第4章 総合論議

レーニングの実施可能な施設の有無等、社会的および物理的環境の影響が考えられ る。しかし、我が国において、このような視点から検討を行った研究はほとんど報 告されていない。米国の高齢者を対象とした研究では、筋力トレーニング行動に対 する恩恵と負担の認知や周囲からの支援状況が、筋力トレーニング実施に影響を与 えること(Bopp et al., 2004)や、周囲の期待に対する主観的規範と行動統制感が 筋力トレーニング実施と関連要因であること(Dean et al., 2007)が指摘されてい る。今後は、環境要因も考慮しつつ、幅広い視点から、筋力トレーニングの実施に 影響を与える要因について検討していく必要がある。

本研究の出典

研究Iおよび研究IIの研究内容は、International Journal of Sports and Health Sciences に投稿中である(研究Iは印刷中)。

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第4章 総合論議

引用

早稲田大学 大学院スポーツ科学研究科

スポーツ科学専攻 スポーツビジネス研究領域

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